2013年7月3日水曜日

6.29 鹿児島・宝山ホール LIVE REPORT


Text by DJ JIN SHIMAMURA

毎回想像を絶するのが長渕のLIVEですが、今回はいつものそれとは違う「サイズ」というスケール感ではなく、「質感」という意味で私の想像をはるかに上回っていました。
いつもなら先ず拳をあげ、エネルギーの解放からキックオフする長渕のステージが、今回は鹿児島に雨が続いていたからか、それとも何かのメッセージなのか?
アルバムやライヴの一曲目というのは、その一枚やその日のステージを象徴しているものと勝手に解釈している私ですが、この日は出来たばかりのラヴソングをアルペジオでしっとりと幕を開けました。
もしあの宝山ホールの夜の出来事を友人や恋人に話すとしたら、どんな風に話すのだろうか、、、
「俺、先週の土曜日ね、長渕のLIVEにいったんだ。
今回はファンクラブのツアーでね。剛がギター一本で聞かせてくれたんだよ。
会場は剛のリビングルームに居るようなそんな雰囲気。行ったことないけどね(笑)。
剛が部屋に入ってきて『おーよくきてくれたな。いつもわざわざありがとな。今日はお前らのためにラブソングを一生懸命歌うよ。あと、せっかく今日は鹿児島の部屋だからな。一番大切な家族、父ちゃん、かぁちゃんの話、ガキの頃の想い出話なんかもするから。。
サングラスもかけなくていいや。何せ部屋だからさ、、あと、拳もガンガン挙げなくても大丈夫。気に入ってくれたら拍手、、、くれるかい?』
そんな風に言われている気分だったよ。
また剛が歌う前や後にその歌がどうやって生まれたのか、その時の気持ちや情景を語ってくれるんだ。ライナーノーツにコメントしているみたいにね。。
『俺にはただいまと言える場所がある。そして待っていてくれる人もいる。感謝。幸せ』そんな事も言っていた。でもそれって人間の根本の部分だよね。その根本を作ってくれたこの土地、そしてかぁちゃん、父ちゃんが亡くなった時に書いた歌も歌ってくれた。本人は、『俺にこんな歌を書かせたんだからきっと優しいオヤジだったんだろうな』
『今日の雨はおふくろの涙だと思うよ、、、うれし涙。やっぱり親、兄弟を大切に。今日はオヤジ、おふくろの歌を歌わせてくれてありがとう』って。」
故郷というものは幾つもあるものではなく、皆それぞれたったひとつだけ。それは、親子の関係にも似ている気がする。そういう意味では、鹿児島だからこそ出てくる感情やセットリスト。またmcでの鹿児島弁がさらにアットホームならぬアットルームな時間に感じた。
また、こんな話をするかもしれない。
「剛のギターはね、唄うんだよ。泣くんだよ。今回怒りは少なかったけど時に怒る事もある。包みこむような愛もある。喜怒哀楽や郷愁もある。そしてあのテクニックを感じるのは、やっぱりギター一本がベストかもね。
また改めてラヴソングの原点は「一対一」だということ。誰かひとりの為に作ったものだからね。聴いてたらいつの間にか主人公が自分になったりしていたよ」
人は心の琴線に自分にとってのキーワードが触れると自然と涙が止めどなくでることがある。なんだか今回はど頭から泣けてきて、中盤では目の前や斜め前にいた女性の涙にもらい泣きをし、(男子には悪いが女性が涙する姿には目がとまってしまう。笑) そして終盤では「未来」に向かっていく力が涙に変わり湧き出てきた。
「song is power」と長渕剛は言い続けていたが、パワーというのはパワフルという「力」の意味でもあり、同時にエネルギーに裏打ちされた静寂や優しさでもある。
つまりパワーには静と動の両面があり表裏だと思う。
今回のライヴで私が感じたのは主に「静」の部分。
音楽を愛し音楽に愛され、同時に苦しみ、だからこそ一曲一曲に愛や情や魂が凝縮されている剛の曲達。
そこにもしA面B面があるならば、良い意味でB面の名曲の数々で「柔よく剛を制す」ステージだったのではないかと感じた。
「あ、そういえば札幌か名古屋にいくんだっけ?ファンクラブでしか見せない剛の顔、楽しんできてよ。あとそうだ。車の中で「LICENSE」聴きながらいきなよ。じゃあまた」